宇宙の果てに、地球によく似た星があった。
これは、その星の片隅にひっそりと存在している「ポンニチ」という国での話である。
最近のポンニチは、なんかもう、異常気象とかマジ、卍であった。
立て続けに大型の台風に見舞われたポンニチの「京東」方面で、イザコザが発生していた。
あの下町人情でお馴染みの「東台」区の避難所が、「ホームレスは臭いから避難所では受け入れません」と発表したのだ。
東台区の避難所では、なんか、あの、ガイガーカウンター?みたいなやつで、避難希望者の臭いを測定し、事前に定めた基準値を超える「オイニ~」を発する者に対しては受け入れを拒否していたのである。
ホームレスA「避難させてくれ~」
東台区の臭い係「あっ、ちょっとタイム。お前、オイニ~やばいわ。踵を返して今すぐ立ち去れい!」
そういうやりとりが頻繁に発生していたのである。
ちなみに、東台区の基準では「0.25oin」を超えた場合、アウトと考えております
(単位「オイニ~」は「oin」と表記)
※日本の台東区ではなくポンニチの東台区です。
そんなこんなで過酷な状況が続いていた東台区では、ついに最も恐れていたことが…!
超大型の台風に続き、大雨、洪水、地震、カミナリ、火事、オヤジ、and more、災害のフルコースに見舞われた東台区では、住民の避難所生活がすでに3週間を経過していた。
台風、停電、断水、台風、停電、断水、なんかもう、ドエライことになっていたのである。
そしてついに、恐れていたことが…!
なんと、避難住民の中から「オイニ~」の数値が基準値を超える者が続出し始めたのだ。
東台区の避難所では基準値の「0.25oin」を超えた臭いを発する者は、即座に強制退去を命じられることになっている。
「3丁目の鈴木さん、昨日の測定で「0.42oin」を超えてたらしいよ…そりゃ追い出されてもしょうがないよね…」
「4丁目の山田さんちのおじいちゃん、脱糞込みで0.27oinだってさ。どうにかしてあとちょっと頑張れなかったかなぁと思うと涙が出てくるね」
次々と避難施設からの強制退去を命じられる住民たち。
アウトの宣告を受けた者は、意を決して巨大台風の中へと飛び込んでいく。
「父さん母さん、オレ…くさくてごめんよ!さよなら!」
東台中学校野球部のエース、池田光宙(いけだ ぴかちゅう)くんも、「オイニ~」がキツくなりすぎたために、避難所から追い出されることになってしまった。
吹き荒れる暴風雨の中、猛然と飛び出していった光宙(ぴかちゅう)くん。
キミの未来に幸多かれ…!
そして、避難生活4週間が経過。すべての避難住民のオイニ~が、ホントにもう、めっちゃアレなことに
4週間目を迎えた朝、最後まで残っていた石鹸問屋の看板娘も、ついに「オイニ~」が基準値を超えた。
そう、
避難所には、誰もいなくなった。
※このお話はフィクションです。フィクション・グレイシーです。
・・・・・・・・・
現代のイソップ童話、みなさんはどう感じましたか?
いったい、どこでどう間違ってしまったんでしょうか?
もしかすると、最初の一歩目から、間違えていたんでしょうか?
そもそも、なんなんですか、この話は?
この物語は、こちらの記事にインスパイアされて書きました。いや、書かざるを得ませんでした。
「ホームレスは臭いから排除」と言う人が抱えている「強烈な不安」(小川 芳範) | 現代ビジネス | 講談社(1/7)
これねぇ~、賛否両論と言うか、ブックマークのコメント欄でも、さまざまな意見が見られました。
分かるんですよ、みんなそれぞれ、主張に一理あるんです。
これはもう、鼻が敏感か鈍感か、
あるいは、
実際に強烈な悪臭に見舞われて苦しんだ経験があるかどうかで、意見が違ってくるんじゃないかなって気もするんですよね。
これさぁ、キレイゴトじゃすまないって気がすんのよね…。
いくつかのコメントで見かけたけど、
電車の車内にホームレスが乗り込んできて、その結果、満員電車にも関わらず、ホームレスが乗った車両から他の乗客が全員逃げ出しちゃって、ムレスの貸し切り状態になってるのを実際に目の当たりにした、
みたいなコメントをしてる人が何人かいたのよ。
こういうケースを実際に体験したことがある人なら、避難所にホームレスを受け入れると、どんなことが起こるのか、いろいろと想像しちゃうってのも分かるんだよね~…。
例えば私の場合、隣のおっさんが臭過ぎてバイト辞めたって経験もあるんすよね。
「自分が身を引けば済む話だな」って思っちゃうタイプなんで。
昔、若い頃、某工場でバイトした時に、同じラインで隣になったおっさんがさ、超臭かったことがあってさ。
全然、風呂に入ってないらしくて。(本人から聞いた)
歯もボロボロで真っ黒で、磨いてない感じ。
髪の毛もゴッワゴワ。
こっちは別に、おっさんの臭いを嗅ごうなんて思ってないんですよ。
でも、ポジション的に、嗅ぎ続けなければならない。
拷問ですよ。
こういう時、どうするのが正解なんすかね?
これ、イギリスの学校の先生に、私は説教されちゃうんでしょうか。
「世の中には臭いおっさんもいるのです。受け入れなさい。嫌悪してはならない」
みたいに諭されて、私は臭いおっさんに心の中で謝罪して、今後も、未来永劫、同じラインで毎日8時間、一緒に作業し続けなければならないんでしょうか。
それが正解なんでしょうか。
「くさいものはくさいんだよ」ってのは、言っちゃダメなんでしょうか。
言っちゃう方が人としての器が小さい、ってことなんでしょうか。
「くさい」という現実から目を逸らし、「い~い香り♪」とか思い込めばよかったんでしょうか。
そもそも、そんなこと、できるんでしょうか。
人間には無限の可能性があるってことなんでしょうか。
諦めなければ夢は叶うってことなんでしょうか。
「心頭滅却すれば火もまた涼し」という感じで、
「鼻を滅却すれば、くさいおっさんもバラの香り」なんでしょうか。
結局私は、超臭いおっさんに、「超臭いですよ」とは言えずに、バイト辞めちゃったくらいにして。
完全にこれは、オレが悪いんでしょうか、自業自得なんでしょうか。
鼻栓でもなんでもして、必死に耐え続けるのが正解だったんでしょうか。
差別する意思なんて微塵もないけど、ただひたすら、超臭い、っていう場合、どうすりゃいいんでしょうか。
もしも自分が避難民だったら、「ホームレスは臭いからつまみ出せ!」って言うのではなく、耐えられなくなったら「自分から率先して避難所を退去します」って行動に出るような気がすんのよね…。
でもこれ……。
やっぱ……。
何が正解なんすかねぇ~…?
家があろうとなかろうと、においがどれだけ臭かろうと、避難所は全ての避難者を受け入れるべきだ、っていうのは、分かりますよ、もちろん。
んで、それを踏まえたうえでの話ですよ。
「におい」に関する話って「感覚」の話じゃないですか。
個人差もあるじゃないですか。
「私はこの匂い平気」っていう人が「私はこの匂い無理」っていう人に対して、「あなたは右寄りの権威主義者ですね」って言っちゃうのは、なんか違うじゃないですか。
主義主張っていうよりも、単純に「嗅覚の個人差」って話じゃね?って気がするんだよなぁ~…。
みなさんは、どう感じたでしょうか。
何かを嗅ぎつけたでしょうか。
最後に、いくつかコメントをピックアップさせていただきましょう。(順不同)
こちらの記事についてのコメントね。
「ホームレスは臭いから排除」と言う人が抱えている「強烈な不安」(小川 芳範) | 現代ビジネス | 講談社(1/7)
これ、難しい問題だよね~…。
確かに断ったのは役所の者ではあるが、彼らは異臭を嫌ったのではなく、他の「住所がある者」から異臭について苦情を言われることを嫌ったのだと思う。 - tamasoのコメント / はてなブックマーク
この論理に従えば、デブも異様に臭いから排除だよね。そしてもちろん、タバコ吸ってるやつもヤニ臭いから排除。当然だよね、臭いんだから。 - azuk1のコメント / はてなブックマーク
責任ない立場や自分に直接関わらない立場からなら理想論なんていくらでも言える。ある意味でトロッコ問題なのだろう。 - chokoviのコメント / はてなブックマーク
いつか自分がそうなる可能性があるとは思わないんだろうか - rrringressのコメント / はてなブックマーク
みなさんはどう感じたでしょうか。