何故メジャーへ行くと日本人投手は肘を故障するのか?(大谷翔平、右ひじトミー・ジョン手術へ)

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今年メジャーリーグに挑戦した大谷翔平投手が右肘のじん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)をすることが決まったそうです。

大谷は、まだメジャーのマウンドで数か月しか投げていないのに…早くも故障?

これちょっとおかしいなぁ。

違和感ありまくりなので、真面目に調べてみました。

 

ダルビッシュしかり。田中マー君しかり。何故、メジャーへ行くと肘を故障してしまうのか?

おそらくね、ダルビッシュも、マー君も、大谷もね、メジャーに挑戦して無かったら、肘、壊してないと思うんですよね。

(故障するとしても、もっと後か、症状が軽いか)

 

ということはだ。

何か原因があるはずなんですよ。

 

日本とメジャーの違い。

ある意味、必然とも言えるような、怪我する要因があるに違いない。

 

ということで、気になってしょうがないので調べてみました。

 

 

日本人投手がアメリカへ渡ると、何故か故障してしまう原因は、いくつか挙げられそうですね。

まずはメジャー経験者の藤川球児氏の見解。

メジャーで日本の投手が壊される理由を藤川球児が語った「投げ方のリスクがものすごい高い」 - スポーツ - ニュース|週プレNEWS

野球解説者の橋本清氏 そもそも故障の原因はやっぱマウンドの影響が大きい? メジャー行ってみんななるし、いろいろ議論されてるけど。どう思ってるの。

 

藤川球児氏 ボールの違いもでしょうけど、やっぱりマウンドの使い方というか、固いんで跳ね返される感じなんですよ。日本人の投げ方だと、下半身主導でいって着地して、そこから粘って体のパワーを伝えながら腕の遠心力でしならせて投げるじゃないですか。1、2の3で着地して、そこで間があるんですけど、向こうのピッチャーはそれがなくて1、2の3ですぐ上半身の筋力の強さで投げる。

だから日本のピッチャーで爆発的なボール投げてた人でも投げ方のリスクがものすごい高いです。絶対に肘やるだろうなっていう。

 

実際にメジャーのマウンドで投げ、苦しんだ経験のある藤川球児氏は肘を壊す一番の原因として「マウンドの固さ」を挙げていますね。

特に、日本の柔らかいマウンドに慣れてしまっている場合は、余計にリスクが高いと。

 

日本人特有の、着地してから粘って、腕をしならせるような、身体全体を使った投球フォームでは、メジャーのグラウンドの「マウンドの固さ」がマイナスに働くようです。

 

それに対して、上半身の筋力だけでもパワーのあるボールを投げることができる外国人投手は、マウンドの固さがそれほど負担にはならない、ということでしょうかね。

 

 

お次は、岡田彰布氏の見解。

岡田彰布が考える、メジャー移籍の日本人投手はなぜ肘を壊すのか? - プロ野球 - Number Web - ナンバー

岡田:よく言われてることやけど、ボールの滑り具合とマウンドの硬さ。日本とメジャーでは、これがいちばん違うところやろな。どっちがいい悪いの問題ではなくて、適応せなしゃあわないわな。

 

藤川氏とほぼ同様の意見ですね。

日本とメジャー、大きな違いは「ボール」と「マウンド」。

 

「ボールの滑り具合」

「マウンドの硬さ」

この二つは、日本のプロ野球経験者にとっては非常にやりづらい要素のようです。

 

 

もうちょっと深く掘り下げてみましょう。

 

メジャー経験もある小宮山悟氏の推察。

ダルビッシュ、田中将大…日本人投手がメジャーで故障する理由とは? | ダ・ヴィンチニュース

肘の故障は、複数の要因が密接にからみあう

・子どもの頃の投げ過ぎ
・変化球(特にスライダー)の多投
・正しくない投球フォーム
・馬革で滑りやすくサイズも重さも大きいメジャー公式球
・「中4日先発5人」によるMLBのローテーション

 肘の故障の原因は、医学的・科学的な解明はされていないが、多くの元選手や専門家も同様の見解を示していることは、見逃せない。経験者が知る「感触」があるのだ。そして、その一人である小宮山氏は、これらが関連して故障を招くという。

 

なるほど、日本では特に「子供の頃の投げ過ぎ」は深刻な問題ですね。

例えば、甲子園とかね。いろいろ厄介です。

高校球児の健康や安全はないがしろにされ、オーディエンスの感動ごっこの犠牲になっている部分は以前から指摘されています。

 

どういう訳か、高校野球は感動物語として消費されちゃうんですよね。

選手やスタンドで応援しているブラスバンドの生徒が熱射病で倒れても、うやむや。

選手層の薄い高校が、エースピッチャーを酷使して何百球も投げさせても、うやむや。

非常によろしくない悪しき伝統がまかり通っているのが現状です。

 

炎天下に練習した結果、脳に障害が残ってしまった高校球児の話も過去に取り上げました。

gattolibero.hatenablog.com

 

小宮山氏が指摘する怪我の要因のうち、

・子どもの頃の投げ過ぎ
・変化球(特にスライダー)の多投
・正しくない投球フォーム

この3つは、監督やコーチ、保護者のやり方次第で改善できる要素です。

周りの大人たちの意識改革から始めなければならないのかも知れませんね。

 

炎天下の甲子園で、ひとりの投手が何試合も連投するような、そしてそれを当たり前に受け入れるような、バカなシステムは改善すべきだと思うんですがね…。

本当に選手たちのことを、子どもたちの健康や安全や、未来を考えるのならば。

 

同じ記事の中に、ダルビッシュ投手の発言もありました。

「中4日は絶対に短い。投球数はほとんど関係ないです。120球、140球投げても、中6日あれば靭帯の炎症も全部クリーンにとれる」

 2014年のオールスターゲームの前日記者会見での、ダルビッシュ選手が声を上げた。月曜定休の日本のプロ野球は「中6日・6人」が主流だが、不定休のMLBでは「中4日・5人」。

 

日本のプロ野球とメジャーリーグでは、登板間隔に差があります。

メジャーでは「中4日」が主流ですね。

一回投げたら、4日間休み。

 

ところが、日本の場合は「中5日」とか「中6日」が一般的。

昔、「サンデー兆治」ってフレーズがありましたよね。

まさかり投法で人気者だった村田兆治投手が、観客がいっぱい入る日曜日に、毎週マウンドに立ってたんで、こう呼ばれるようになったんですけど。

毎週日曜日に投げる、ってことは中6日、ということです。

一回投げたら、6日間お休み。

 

ず~~っと何年も、このローテーションを守って投げていた投手が、もしもアメリカへ渡って「中4日」で投げるようになれば、そりゃ怪我の危険度は増しますよね。

毎回、完全に身体が回復する前にまた投げなければならない可能性がある。

 

こんな記事もありました。4人の専門家に取材した、とのこと。

投手の肘を壊す日本野球の構造的欠陥

(侍ジャパンの投手コーチと15U代表(15歳以下)の監督を兼任する鹿取義隆氏、筑波大学体育系准教授&同大学硬式野球部監督の川村卓氏、整形外科医で筑波大野球部のチームドクター&部長を務める馬見塚尚孝氏、高崎中央ボーイズで中学生に教える倉俣徹氏の4名への取材)

根本的問題は小中学校時代にある
4人に話を聞くうちに共通見解として浮かび上がったのが、小中学校期の問題だ。現在の日本の指導法を考えると、甲子園やプロ野球で投手たちに肘の故障が続出するのは必然的だと言える。川村氏が説明する。

「実はいま、高校生以上になってから初めて肘を痛める確率は本当に低いんです。実際は、小学生のときに痛めていたものが、高校生以上の大人の体になったときに発症する。再発すると言ったほうが正しいと思います」

 

なんと。

実際には、小学校時代に痛めていたひじ痛が再発してる、といった方が正しい…だと!?

 

「子どもの頃は出せる力が低いので、痛めても、少し黙っていればまたプレーできるようになる。実はそのとき、肘の筋や腱に異変が起きています。でも放っておけば、そんなに出力もかからないので、『大丈夫』ということになる。それが大人になって筋力が上がり、力が出るようになると、古い傷がバンと顔を出してくる。プロ野球の投手で30〜40球まではいいパフォーマンスを出せるけど、50球になると急激にグーンと力が落ちるのは、ほとんどが小学校くらいの頃に何かやっているだろうと考えられます」

 

そして驚愕のデータが…!

馬見塚氏によると、少年野球の投手に限った場合、70%が肘痛を発症しているというデータがあるという。

少年野球のピッチャーの70%が肘痛を発症!!

こりゃダメだぁ~~。

おそらくプロで投げてるピッチャーのほとんどは、子どもの頃に一度は肘を痛めた経験があるでしょうね。

 

そしてもはや現代では、球速を上げるためのトレーニング方法自体は、すでに分かっているんですね。

しかしそれを導入すると…

「球速を上げるためのトレーニングもだいたいわかっている」。そのメニューを大学生に実施させると、すぐに10kmくらい速くなるという。

しかし1、2週間後、その選手は決まって肘痛に襲われる。

いや~、こうなってくると、監督やコーチの倫理観の話になってきますね。

選手を使い捨てにして目先の勝利を掴みに行くかどうか。

 

もうひとつ紹介。「過酷説」と「投球フォーム説」と「ジュニア期の登板過多説」。

前出の意見と同様「ボールの違い」と「登板間隔の短さ」を原因と考える過酷説。

怪我の遠因は諸説あるが多くの日本メディアが報じているのは、MLBが日本のプロ野球と異なるボールを使用していること、日本より短いサイクルで先発投手の登板機会が回ってくるとする、“過酷説”である。

「ベースボールと野球の違いはあると思います。日本のボールよりアメリカのボールのほうが重いわけですから、当然、負担がかかります。登板間隔についても同じことが言えます。人間には慣れというものが存在しますから、適応に時間がかかります」(小島氏)

 

そして、投球フォーム説。

黒田は何故、メジャーでも大きな怪我をせず投げられたのか?という話。

黒田投手や上原投手が重大な故障をしていない1つの要因として考えられるのは、投球フォームに起因します。彼らはどちらかというと、“力投”しない投球フォームなのです。わかりやすく言えば、余分な力を入れることなく、柔らかく投げているということです。

 

それに対して、ダルビッシュ、田中、大谷は…。

小島氏(元ドジャースのスカウト)は、「剛」か「柔」であるかが重要なテーマだとこう提言する。

「ダルビッシュ投手は、高校時代も含めて、日本にいたころは『柔』らかく投げていました。一方、田中投手は力投型の投球フォームで『剛』といえました。ところが、彼らは近い時期に怪我をしました。

要因は彼らのその後のスタイルの変化にあります。ダルビッシュ投手は、アメリカに渡る1年前に、2カ月で約10キロの体重を増やし、パワーピッチングをするようになりました。それまでの『柔』の投手から『剛』に変わったのです。逆に、田中投手はアメリカに渡ってから『柔』に転換しつつあります。2学年離れている2人の怪我が重なったのは、ダルビッシュ投手のほうが『柔』の時期が長かったからだと思います。日本ハムの大谷翔平投手は高校時代まで『柔』でした。今は『剛』になったので、彼も心配です」

 

力でねじ伏せる、というようなスタイルでは、長く投げ続けるのは難しいのかも知れませんね。

 

そして、またしても、「ジュニア期の登板過多説」。

例えば、田中投手は高校時代と日本のプロ野球時代には連投・完投を多くこなし、登板過多の傾向があった。

アメリカ国内でも、ピッチャーの肘の問題が同じようにあり、ジュニア期の登板過多を問題視する声がある。だが、アメリカと日本が決定的に異なるのは、そうした問題に対し、迅速に取り組む組織の柔軟さがあることだ。

 

 

あらためておさらい。いくつかの要因が重なって、故障に繋がっていそうですね

様々な、専門家、有識者、元メジャーリーガーなどの話を総合すると、だいたい問題が見えてきましたね。

 

ひとつには、ボールの違い。

日本のプロ野球と、メジャーでは、ボールの大きさや重さ、滑りやすさなどに違いがあると。

 

ふたつめには、マウンドの固さ。

メジャーのマウンドは固いので、選手(フォーム)によっては大きな負担がかかる。

 

3つめには、登板間隔の短さ。

メジャーの常識「中4日」は、選手によっては、完全に回復する前にまた投げなくてはならない。

 

4つめには、ピッチングスタイルの問題。

メジャーへ挑戦するにあたって、パワー型に移行した投手は軒並み、怪我に見舞われている、という事実。

(おそらく大谷投手も、日本で投げていた時以上に、頻繁にフルパワーで投げ込んでいた?)

 

5つめは、ジュニア期の古傷が再発しているという説。

上記のような様々な要因で、日本で投げていた時以上に体に負担がかかった結果、今までだましだまし付き合ってきた過去の古傷が再発してしまったのではないか、という見解。

 

他にも、「日本で投げていた時よりも張りきっちゃった結果」という説も、実はけっこう見かけましたね。(主に野球ファンの方々の見解)

 

 

いずれにしても、メジャーの投手の肘の手術の割合って、他のスポーツの選手と比較すると、ちょっと異常なくらい多いと思うんですよね。

そして、日本人投手だけではなく、国籍関係なく怪我してますよね。

 

これだけの高確率で手術しなくちゃならないってのは、どうなんだ?って思いますけど、どうしてもっと本気で改善しようという話にならないのか不思議です。

球数制限を導入しても効果が見えないのであれば、登板間隔の方に問題があるのではないか?とか、そういう話になりそうなもんですが…。

 

あるいは「日本のプロ野球の方が怪我が少ないらしいが、メジャーも見習って、もうちょっと滑りにくいボールを採用してみようか」とか。「試験的にオープン戦ではマウンドを若干柔らかくして見ようか」とか。そういう話にはならんのでしょうかね?

 

とにかく、何らかの対策を大々的に講じても良さそうな気がするんですけどねぇ…。

アメリカ人の方が、体にメスを入れることに抵抗が無い、手術に抵抗が無い、ということなのかも知れませんが…。

 

やっぱり可能ならば、「選手を限界まで酷使して、手術で復活させる」っていう選択肢よりも「怪我しない程度に頑張ってもらって、長くプレーできるように環境やシステムを整える」っていうやり方のほうが賢明な気がするんですけどねぇ…。

 

少しでも、選手の怪我のリスクが軽減されるよう、スポーツをとりまく環境やルールが改善されることを願うばかりです。