要領よく生きていけるならね、ちゃんと五七五のルールを守って句を詠めばいいんですよ。
でも、それができなかった。既存の枠の中に行儀よく収まることができなかった。
そういう「はみ出し者」がね、いるんです。
社会のルールの内側で上手に生きられなかった者たちの「魂の叫び」なんです。自由律俳句ってのは。
山頭火しかり、放哉しかり。上手に、無難に、ちゃんとした立派な社会人になれなかった、ろくでなしである。そしてかくいう私もだ。
お行儀が良くて、ちゃんと社会のルールを守って、上手に生きていける人ならば、どうぞ、セオリー通り、五七五、模範的な句を詠んでください。
これはねぇ、
俳句ってのはねぇ、その人の生き様そのものなんですよ。
人間の存在そのものなんです。
いや、俳句に限ったことじゃない。
作品ってのはねぇ、芸術ってのはねぇ、言ってみれば、その人自身なんですよ。
その人の分身であり、その人の「命のかけら」でもあるんです。
山頭火なんて、アル中のホームレスですよ。風来坊ですよ。
「無駄に無駄を重ねたような一生だった、それに酒をたえず注いで、そこから句が生まれたような一生だった」って、自分で日記に書いてる。
尾崎放哉も、しょ~もないクソみたいな野郎ですよ。
東大卒のエリートか何か知らんけど、酒飲んで上司ぶん殴ってクビになって。
どうしようもなくなって家族を捨てて逃げるように彷徨って。
放哉の伝記的小説を書いた作家の吉村昭は
「金の無心はする、酒癖は悪い、東大出を鼻にかける、といった迷惑な人物で、もし今、彼が生きていたら、自分なら絶対に付き合わない」と語ってるし。
こういうね、ど~しようもないヤツってのがいるんですよ、世の中には。
ゴミですよ。クズですよ。
でもね、本人たちはさ、そういう生き方しか選べなかったんだよ。
しょうがなかったんだ。
だって、他の生き方を選べるほど、器用じゃなかったから。
他のみんなみたいに、ちゃんとルールを守って、無難にそつなく生きていくことが、ど~~しても出来なかったんだよ。
分かるよ。オレは分かるよ。
山頭火も、放哉も、ちゃんとした定型の俳句なんかじゃ、自分自身を表現できるわけがないんだ。
そんなことすれば、自分自身に嘘をつくことになってしまう。
ろくでもないクソ野郎のクセに、いっちょ前に、俳句だけはちゃんとルールを守っても、そんなのただの嘘っぱちだ。
ちゃんと生きることができなかった自分自身を
ちゃんとした句で表現することなんて出来ないんだ。
それをやっちゃダメなんだよ。
自分に嘘をついちゃダメなんだ。
正直に、ありのままの自分自身を表現しようとすれば、ルールを無視した俳句になってしまうのは、必然なんだよ。
無様な自分を、ありのままに、正直に、表現する。
そうじゃなくっちゃ、意味がねぇんだよ。
そういえば、以前、こんなことを書いたけども。ようするに、同じことです。ありのままの自分を表現するってこと。
ちょっと脱線しますが。
私が使用しているのは、こちらのアイコン。
自分で描きました。マウスで。
一発勝負です。
数十秒の真剣勝負。
ヘタですね。
結果、ヘタですが、重要なのは、上手く描こうとか、下手に描こうとか、そういう作為を排除することにありました。
私にとって重要なのは、「無為自然」。
「ありのままの自分自身を表現すること」でしたので、これでOKなのです。
これはもう、哲学とか信念の話になってきてしまいますが…。
私はね、「取り繕っちゃダメだ」って思っていたのです。
「実際の自分よりも、少しでも自分をマシに見せよう」という気持ちを排除したかったのです。
実際の自分がヘタレで、しょ~もない人間なのに、アイコンだけ綺麗で、美してく、立派だなんて、そんなのは嘘っぱちで、すごくイヤだったのです。
ふがいない自分の事も、全部、受け止める!
ありのままの自分で勝負する!
ヘッタクソなアイコン画像は、その決意表明でもあるのです。
非の打ち所のない人を演じない。
— ネコ師匠 (@nekomasterTW) 2016年8月23日
不完全な自分のまま堂々と生きる。
たとえそれが、どれだけ無様なものだったとしても、偽らず、目を逸らさず、言い訳せず、受け止めること。
大切なのはその覚悟。#自由ネコの中の人 pic.twitter.com/P9AD1s3MDO
アイコンなんて、ある意味、自分自身の分身であり、自分自身の顔面ですからね。
究極の、自己表現の場ですよ。
自分を知ってもらうための、こんなチャンスは滅多にないんです。
自分がどういう人間なのか、それを全面的にアピールするための重要な舞台なのです。
私は、「どんなに無様で不格好でも、そのままの自分で勝負するんだ」って最初から固く心に決めていましたので、アイコンは一貫して変更していません。
イラストの上手な人にアイコンを描いてもらえそうなチャンスも何度かありましたが、私にとって重要なのは、自分を実物よりも良く見せることではありませんから、アイコンの変更はナシです。
さっき、会心の出来の自由律俳句ができた。自分の代表作になると思う。
もしも、いずれ作品集を出すようなことになったとすれば、本のタイトルとして使ってもいいような、会心の一句。
にんじん
買い忘れている
(さっき、実際にガチで、買い物に行って人参を買い忘れてしまいました)
・・・・・・・・・
う~~~む……。
これだ。
山頭火の「まつすぐな道でさみしい」
放哉の「咳をしても一人」
と匹敵するほどのクオリティではないか。
十年後でも二十年後でも、色褪せることの無い「強度」を持っている。
普遍的な力を持っている。
よし、これでいきましょう、作品集のタイトル。
(作品集を出版するとは言っていない)
これねぇ~、ちょっとさ、あんまり自画自賛するのはバカみたいなんだけど、そもそも私はバカなんで、ちょっと解説させてください。
にんじん
買い忘れている
そもそもね、平日の昼下がりに、おっさんがひとりで八百屋で買い物してる、っていう状況が、この人はサラリーマンじゃない、まっとうな勤め人じゃない、っていう様子を表しているわけです。
無職なのか、主夫なのか、いずれにせよ、ネクタイしめて会社勤めするタイプじゃない、っていう「人となり」がうかがえるわけですね。
しかも購入し忘れた食材が「にんじん」です。庶民的。これ以上ないほどの庶民アイテム。あきらかに、カネ持ってるタイプじゃない。
これが「ドリアン」とか「メロン」とか「刺し身」とかじゃ、このアットホームな空気感は出ないわけです。
しかもね、「にんじん」ってワードの音の響きが。
くしくも相田みつをの「にんげんだもの」のパロディー感を演出してるんですよね。
幸か不幸か。
「にんげんだもの」
「にんじん買い忘れている」
質の悪い雑な類似品みたいになってる。
このチープ感、じわじわ来るじゃないですか。
あとね、「買い忘れた」じゃなくて「買い忘れている」ってところがね、地味にポイントです。
「買い忘れた」って過去形にしちゃうと、すでに家に到着してる雰囲気になっちゃうんですよね。
ここは「買い忘れている」っていう、ナウ、今、現在進行形な状況を表現したかったんです。
まだ、家に辿り着いてないんですよ。八百屋からの帰り道なんです。
帰り道、トボトボと歩きながら、ハタと気づくわけです。
にんじんを買っていないことに。
にんじんを買いに行ったのに、なかなか新鮮そうなにんじんが見当たらない。
とりあえず、にんじんを後回しにして、他の野菜を買うことにしよう、って考えて、キャベツとか水菜とか選んでるうちに、にんじんのことをすっかり忘れて、お会計を済ませてしまう。
マヌケと言うか、無能と言うか。にんじん一本、満足に買う事も出来ないデクノボー。
この、なんというかな、哀愁とでも言いましょうか。ワビサビとでも言いましょうか、人生の悲哀みたいなものをね、醸し出したかったんですよね。
にんじん
買い忘れている
この完成度の高さ。
もう、ここから、1文字も足せないし、1文字も引けない。
「買い忘れてる」だと、微妙にヤング感が出ちゃうしなぁ~。
やっぱ「買い忘れている」が、今の気分ですかね~。
この、自分の句を自画自賛し、解説することの虚しさ。
これはこれで、哀愁、てんこもりですね。
現在、ハッシュタグ #自由律俳句的つぶやき が付いた自由律俳句を募集しております。
参加者の皆さんの中から、今回は一句、紹介させていただきましょう。
桐生君並みの速さで飲み会の誘いから逃げる#自由律俳句的つぶやき
— 神楽月 (@kagura_duki) February 18, 2019
こちらの方は、確か、アルコール依存症と闘っていらっしゃった方なんですよね。
アルコール中毒って、おそらく、想像を絶する辛さだと思います。
メチャクチャ辛いはず。でも、そのつらさを桐生選手と言うオブラートでコーティングして、ユーモアに変換しています。
#自由律俳句的つぶやき は、まだまだ募集しております。
これ、ポイントはおそらく、
「何かカッコいいこと言ってやろう」とか、
「上手いことまとめてやろう」とか、
「良い句を作って褒めてもらおう」とか思わないことですね。
虚栄心みたいなものは、作品から透けて見えますからね。
「自分自身を実物よりも一回り大きく見せてやろう」とか、思えば思うほど、作為に満ちた、嘘くさい、心に響かない作品になっていくと思いますね。
自然体です。
あくまでも自然体で。
今、目の前にあるもの、目の前の現象に、目を凝らす。耳を傾ける。
そこに、今まで気づかなかった「美」のようなものを見いだすことができれば、その時の気持ちを作品に込めれば良いのだと思います。
いや、知らんけどね。俳句の作り方なんて。
今、言ったことは、あくまでも、私なりのやり方です。あらかじめご了承ください。
さて…。
明日はにんじん、買わないとなぁ…。
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