あえて釣られておきましょうか。
『何者にもなれなかった「40男」たちの絶望』という東洋経済オンラインの記事を読んで、モヤりました。
時計のメーカーがスポンサーなのか、何なのか分かりませんけど、先日のダイナースクラブの広告記事を思い出しましたよ。
あの炎上したやつね。
先日「デキる男はダイナースのクレカを持っている」的な、クソ広告記事が炎上しておりましたが…
いきなり挑発的というか。
なんなんだよ
「美人秘書たちの本音トーク炸裂! いま男性が持つべきクレジットカードとは?」
って。
もう、いろいろ怖いよ。
「美人秘書」とか「男が持つべきクレカ」とか。
キナ臭いワードが並んでおりますよ…。
美人秘書たちの本音トーク。
大平 カードの種類とか色とかでその人がわかるとは思えないけど、百貨店とかスーパーとかのカードしか持っていないと、「この人は何にもこだわらない人なんだろうな」と思っちゃう。カードは1枚あればいいやって。向上心とかなくて、何に関しても無頓着な感じがするかも。
松村 それ、わかる気がします。私は1枚しか持っていないけど(笑)、上司が使用シーンにあわせて使い分けているのを見ると、男性らしいこだわりを感じます。
荒井 使い分けるのはいいけど、やたらポイントとかばかり気にする人いません? こっちのほうがポイント高いとか、ランクアップするために高い買い物にはこのカード使わなきゃとか、必死になってる人。
なんだこの、ゴリゴリのステルスマーケティング!
ステルスが前に前に出てきちゃってますよ!
百貨店やスーパーのカードしか持っていないヤツは何に関しても無頓着
…だと!?
シーンに合わせてクレカを使い分ける上司に男らしいこだわりを感じる
…だと!?
やたらポイントばかり気にする人(嘲笑)
…だと!?
ほっとけ!
余計なお世話なんじゃボケ!
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まぁいいや、今回はダイナースの件、関係なかったな。
話を元に戻そう。
お笑い芸人の山田ルイ53世と、社会学者の田中俊之氏による対談。……モヤる。
「40男それなりのものを持ってないとダメ」問題
ってのがあるらしいです。
田中:(略)あるとき、市民講座で30代後半の男性参加者から、「田中先生もG-SHOCK派で安心しました」と言われてハタと気づきました。
山田:どういうことですか?
田中:その発言には、「時計なんて、時間が正確で丈夫ならいいですよね? 40代になったからといって、ブランドにこだわらなくても平気ですよね?」というニュアンスが込められていたように感じます。
つまり、30代までは自分の好きなものを使っていてもいいけど、40代になったら時計や財布はそれなりのものを持たなきゃいけない、という世間からのプレッシャーがあるのではないかと。
それ以来、同世代の男性に会うと、腕をチラチラ見て時計を気にするようになってしまって(笑)。
田中俊之氏いわく。
30代までは自分の好きなものを使っていてもいいけど、40代になったら時計や財布はそれなりのものを持たなきゃいけない、という世間からのプレッシャーがあるのではないか
田中:(略)僕自身は、時計なんて時間がわかればいいや、くらいの感覚でいるのに、他人から「なんだ、G-SHOCKか」と思われていたらどうしようっていう気持ちもあります。
ダメじゃん。
他人に「なんだ、G-SHOCKか」と思われたらどうしよう…ってビクついてんじゃん。
全然「世間からのプレッシャー」という呪縛から自由になれてないんよね…。
田中:(略)「時計は価格のマウンティングになっちゃってキリがないから、Apple Watchで逃げる手もある」というネット記事を見たんですよ。
時計は価格のマウンティングになっちゃってキリがない
時計は価格のマウンティングになっちゃってキリがない
時計は価格のマウンティングになっちゃってキリがない
時計は価格のマウンティングになっちゃってキリがない
うわーーー!
もうやめてくれーーー!!!
実は、この不毛な争いに敗北せずに済む方法がふたつあります。
ひとつは、奮発して高い時計を購入し「マウンティング合戦に勝利すること」。
そして
もうひとつは、そもそも「マウンティング合戦に参加しないこと」です。
中学2年から6年間ひきこもりだった山田ルイ53世さんなら、きっと分かってるはずです。
例えばこのインタビューとか。
山田氏:(略)最初は勝負する世界をズラしたことによって、ごまかしたという部分もあります。勉強の世界で評価される、特別な存在になる道は断たれた。でも、「お笑い」まで世界をズラせば、勉強のことが関係ない、別の道で評価されるということで芸人を始めたんです。
勝てないフィールドで勝負するのではなく、世界をズラす。
そういう考え方を持っていますからね。
んで、山田さんの時計は…と。
山田:僕も、今している時計は20万?30万するヤツですけど、どこのブランドでどういうモノか全然わかってないです。「これぐらいのしとけばいいんでしょ?」という感覚ですね。
20万~30万の時計!?
( ゚Д゚)!!
分かってない!
あ~~、何これ。
ダイナースのクソ広告記事の再現か?
・・・・・・・・・
とまぁ、こんな感じのやりとりが続くわけです。
しょ~もない。
クソみたいな。
なんかさ、山田ルイ53世は、元ひきこもりでさ、「弱者」とか「勝ち組になれなかった人」とかの心に刺さるような、すごくイイこと言ってた記事もあったはずなんよね。
ところがだ。
なんなんだよ、この対談は。
僕は30万の時計してますとか、カミさんには最低でも15万以上の財布を買わないといけないとか。
なにそのエピソード。
そのエピソードは、いったい、誰を勇気づけるためのものなんですか。
何者にもなれなかった40男が、ひとりでも救われるっていうんですか。
クソでしかないでしょ…。
いらんよ、そんな内容。
世の中には2通りの人間がいる。「長い物に巻かれる者」と「世の中の流れに抗う者」だ。
これねぇ、個人的には、度々、思うことなんすけどね、
ものすごくザックリ言うと、2通りのスタンスがあると思うわけよ。
生き方っていうか、世の中に対する向き合い方ね。
今回の対談に登場した田中氏と山田氏は、この記事に関して言えば「長い物に巻かれる者」だと思うんよね。
おかしい、世の中、何かがおかしい、「時計の値段でマウンティングなんておかしい」うっすらとそう気づいているにもかかわらず、「おかしいじゃないか」と声を上げることなく、おかしな世界のおかしなルールにのっとって、とりあえずはみ出さないように、負け組にならないように、無難に立ち回る。
これ、「長い物に巻かれる者」たち。
この人たちは社会を変革しないし、世の中を良くすることもない。(たぶん)
おかしな社会を正常化するつもりはなくて、むしろ自分自身をおかしな世界にフィットするように捻じ曲げることで、やり過ごしている。
極論を言えば
「世界が狂っているのなら、自分も狂えばいい」
そういう処世術を駆使して世の中を渡っていく。
それに対して、「世の中の流れに抗う者」はどうか。
「時計の値段でマウンティングなんておかしいじゃないですか」と主張できる人たちです。
当然、マウンティング目的で高級時計を買うことは無いです。
徹底抗戦の構えです。
世にはびこる、狂った価値観に対して、真っ向勝負です。
「おかしい」ことを「おかしい」ままにしておくのが耐えられない。
私はやっぱね、こっち側の人々、すなわち「世の中の流れに抗う者」に共感することが多いし、応援したくなるわけですよね。
何故なら、自分自身も既存の価値観の枠組みの中では生きられなかった人間だからです。
私は、一般社会の価値観に照らし合わせると、完全なゴミ人間だからです。
長い物に巻かれるような生き方はできなかった。
んで、てっきり山田ルイ53世は、こっち側の人なんだと思ってたんだけど…。
やっぱ芸人として売れて、月収100万とかもらうようになって、すなわち「既存のルール内での勝ち組」になっちゃうと、もう、世の中の流れに抗う必要なんて無くなるってことなんだろうなぁ…。
弱者の立場ではなくなったわけだから、世の中に物申す、みたいな姿勢は必要ないもんね。
勝ち組となった今は、現在の社会のシステムに文句を言う筋合いが無い。
事を荒立てずに、黙って高級時計を身につければそれで万事収まる。
そういうポジションに落ちついちゃったからね。
いつまでも、反骨精神むき出しみたいな、ファイティングポーズを取り続ける必要がないんだよね。
さっき、「長い物に巻かれる者」たちは、おそらく社会を変革しないし、世の中を良くすることもない、って書いたけどさ、
それに対して「世の中の流れに抗う者」たちは、社会を変えようと努力するよね。
少なくとも、世の中を今よりも良くしようと努める人々だ。
「長い物に巻かれる者」は、自分が不利益をこうむっていなければ、問題ないと思っている。
それに対して「世の中の流れに抗う者」は、自分ひとりが助かるだけじゃ気が済まず、自分と同じように苦しんでいたり困っていたり、理不尽な思いをしている人々も、根こそぎ何とかしたいと考えている。
ようするに、社会の仕組みとかルールそのものを根底から変えようと考えている。
「世の中の流れに抗う者」は、自分が勝ち組になれば納得するのではなく、全ての負け組が生きやすい世界を実現しようと抵抗する。
できるできないは、また別の問題だけどね。
結局、私的には、お笑い芸人の山田ルイ53世と、社会学者の田中俊之氏には、「時計マウンティング」に参加してほしくなかったんだよね…
ある程度、知名度があって、発言権があって、社会的に大きな影響力のある人にはさ、
「時計の値段でマウンティング合戦とか、愚かな価値観ですよ」
って一刀両断、すぱっと言い切ってほしかったんだよね…。
ましてや、元ひきこもりの山田ルイ53世なら、なおさらのこと。
世の中の不条理や、理不尽さとか、散々、味わってきたんじゃなかったのかね。
でも、実際には2人とも、めちゃくちゃ乗っかってんのね。
高級ブランド・マウンティングに。
田中さんとかさ、なにこれ。
田中:僕も自分でどれぐらいの財布を持てばいいのか全然わからなくて。小島慶子さんの使っている財布がすてきだったので、どこのブランドなのかを聞いて、六本木の東京ミッドタウンで購入しました
- 小島慶子
- 六本木
- 東京ミッドタウン
「はい、揃った。これで役満」みたいなことなんすかね?
クソかよ。
抗えよ。抵抗しろよ。
私なんか、世の中を変えることができるパワーを持っている人々には、期待しちゃうんよね。
自分自身が何も持っていないからさ。無力だからさ。
「持ってる人、頼んだぞ!」って、心のどこかで、うっすら思ってしまう。
せっかくパワー持ってんのに、誰も勇気づけない、誰も救わない、そんなことばっかりドヤ顔で語っても、もったいないっつ~の。
ちなみに、『何者にもなれなかった「40男」たちの絶望』は、新刊『中年男ルネッサンス』からの抜粋とのこと。
ご興味を持たれた方はどうぞ。
せめてインターネットの中、ブログの中だけでも、ジタバタとあがいていきたい。