いや~面白かった。
ハリウッドで映画化もあるんじゃないか?っていうくらいの「作品」ですよ。
ジェットコースタームービーなこと「インディ・ジョーンズ」のごとし。
笑えて、泣ける(泣けない?)、極上のエンターテインメント。いろいろ考えさせられるが、とりあえずハッピーエンド的な結末。名作。
ちょっとね~、ホントにもう、心の中で、何回も何回もツッコみながら読みましたよ。
紆余曲折、ありまくり。
simplearchitect.hatenablog.com
移住した時に何か自分にご褒美を買おうと思っていた。最初はアメリカは家が広いだろうから、歌も、楽器もやりたい放題じゃないか?とおもったけど、アパートに住むと、そうでもないので、高い機材を買うより、思いっきり歌って、楽器を弾ける環境を作ることにした。ヴォーカルブースという一人用の防音室があるからこれを買おうと思い立った。これでがっつり練習しよう。ちなみにこんな感じのものだ。
アパートにいながら、楽器を弾いたり、歌を歌ったり。
防音室があると、大音量をぶちかましてもノープロブレム!なんですね~。
まぁまぁ、ここまでは、よくある話ですよね。
防音室の二つや三つ、どこの家庭にもありますし。
問題は、その先ですよね。
実際に行動に移してみるとコテコテにトラブルに巻き込まれた。
はいー!キター!この先、ドラマティックな展開が待ち受けておりますぞ!
直接銀行口座に振り込むようになっていたけど、アメリカ人の友人がリサーチしたほうがいいと。だまされる可能性があるからとのことのようだ。
(゚д゚)!マジか!
普通にこういう詐欺が横行してんの!?
怖い…アメリカ、怖い!
ブースを作っているオレゴンでは、雪が降っていて交通がマヒしているようで、すぐに出荷できないといわれる。
ほう…。国土、広いからね~。
とはいえ、出荷のタイミングが天候次第ってのはちょっとストレス溜まりますね…。
日本の宅配の凄さ
こっちにいると、宅配の遅れみたいなのはしょっちゅうだし、適当だし、翌日配送とかありえない。昔は Amazonすげーって思っていたけど、あれ凄いの佐川とか、黒ネコだわ、、、
はっ!そうか…!
「翌日配送のアマゾン、すげー!」とか言ってるけど、本当にスゴイのは、それを可能にしている日本の宅配業者だったんだ!!!
おそらく、アメリカのアマゾンで買い物したら、配達が遅れるんだよね?
だとしたら、やっぱ、Amazonがスゴいんじゃなくて、宅配業者がスゴいんだっ!
この後、配達の予定日当日になってから「やっぱ今日は配達、無理」みたいな連絡がくる、っていう流れを何度も繰り返します。
しかも、「受取時は自宅で待機していてください」みたいなこと言われてるので、ずっと家にいなければならないという地獄。
こんなの、日本ではなかなか体験できないアトラクションですよ…。
オペレータさんに電話をすると、言われたことが、「Do you have a fork lift?」「えっ」、、、流石にそんなこと人生で言われたこと無い。どう考えてもわしの住所アパートやねんけど、、、
「Do you have a fork lift?」(あなたはフォークリフトを持っていますか?)
なんかもう、このへんから、怪しみがどんどん増していきます。
「Yes!I have three fork lifts.」(ハイ、私はフォークリフトを3台持っています)
みたいな会話、普通、考えられないでしょ。
無いから。普通、1台も持ってないから。
宅配で届く予定の荷物の詳細を見てかなり不安な気持ちになった。「920lbs」大体 480 kg 。何かが間違っている。
重量が480キロ…!?
いやいやいや、無いでしょ!アパートの床、抜けますよ!?
っていうか、今!?
今なの?重さの確認、今なの!?
これはもう、アメリカの文化どうのこうのって話じゃないですよ。
この人個人の問題じゃないですか。
注文する前に、重さ、確認しておこうぜ、っていう。
こんなもの買ったら引っ越しの時どうするねんとか、そもそも入るのか?ということが頭をよぎった。これ買った俺がアホやったんちゃうか、、、
う~~む……。
そうねぇ、そういうことですよねぇ…。
んでもって、ようやくここで、アパートの天井までの高さと、防音室のサイズを比較するに至るわけです。
アパートの事務所の人に、天井までの高さを問い合わせてみる。
彼女はこう答えた。「そうねー。ようしらんけど、8-9 (inch) の間ぐらい」そして、VocalBoothのスペックを調べると、「8.8 inch」こんなん絶対無理やん!
Oh…。
いや、これさ、アメリカ文化の洗礼とかじゃねぇから。
このひと個人の落ち度じゃないっすか。
日本でも同じことじゃん…。
例えば、冷蔵庫買ったけど、サイズが大きすぎてキッチンに入らない、みたいなのって、サイズを確認しないで買った人のミスじゃん…。
冷蔵庫メーカーのミスでもないし、
宅配業者のミスでもないし、
家を建てた建築士のミスでもないし、
ましてや、日本文化の悪しき部分でもない。
なんで、確認しないで買うの!!!
そんなこんなで、キャンセルの電話をかけますが…。
「高さが多分無理なので、キャンセルしたいんだけど、リファンドとかあるの?」と聞くと、彼は「そうか、残念だね。1000ドルぐらいは負担になるけど、そんなひどい目には合わないし、リファンドするよ。単にコンテナを送り返すように指示をしたらいいよ。だけど、このVocalBoothは、何千台も出荷しているけど、一回たりとも高さが問題になったことがない。8インチあれば組みあがるよ。」彼の口調もだましているようには感じなかったので、素直に信じてみることにした。せっかくアメリカに来たのだからこうなったらやってみよう。
「せっかくアメリカに来たんだから、やってみよう」
って何!?
結局、キャンセルすること自体をキャンセル!!!
しかし、ここから物語は怒涛の展開を見せる。ヒーローってのはピンチの時に駆けつけるものなのだっ!
そのあと、またしても、ブツが予定通りに届かない、助っ人を頼んでいた友人がこない、みたいな「すれ違い」が何度も発生します。
トラックの運転手さんから電話かかってきて「ごめん、今日無理だわ」 orz 今まではともかく友達が向かってきてくれっるのに30分前にってなによ、、、、
あ~~なんかもう、こういうのイヤ…。
事前の約束通りに事が運ばない、っていうか、運ばなすぎって、すごいストレス…。
そんでもって、ここから、ますますエスカレートしていって、これもう、八方ふさがりで、どうにもならんだろ…っていう状況に追い込まれていきます。
まぁとにかく、なんだかんだで、商品自体は、アパートの前に到着するんですが…。
運転手は路上に商品を下して去ってしまいます。
重さ480キロですよ。これ、どうするの?っていう。
友人もいない、雨も降っている。よくわからんが、とにかく分解するしかない。
こんなの、もうホラー映画ですよ。怖いわ。怖すぎるわ。
この巨大なコンテナと中に入っていた工場施設のようなパーツを見つめながら、「無理じゃね、、、」と心の中でつぶやく自分がいた。「やっぱ昨日の時点でキャンセルが一番正しかったなぁ。」
号泣必至な展開。
(´;ω;`)ウッ…
しかーーし!!
ここから!物語のトーンは一転!
感動のクライマックスへと突入していきます。
詳しくはこちらでどうぞ!
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いや~~、ホントね、一本の映画を観てるような気分になりましたね。
とにかく、いろんなことを考えさせられました。
たとえば、このくだりとか。
周辺住民の反応。
日本の同じアパートの人だと「大家さんに相談したほうがいいんじゃない?こんなのは入らないよ。」「邪魔だし、無理だよ」「迷惑です」とかいわれそうなものだが、絶望している私に何人もが話しかけてきて、「おー、これ、めっちゃいいやつやん、俺もギター弾いてるんだよ、君がうらやましいな!」とかおばちゃんも「防音室だねー。エンジョイしてね!」誰一人あきらめろとか、迷惑とか言わなくて、「めっちゃいいね」と言ってくるのだ。自分は絶望しているのに。もうキャンセルしたいって。
困難に直面している主人公に対して、誰一人として、否定的な言葉を投げつけてこない。
これぞ、アメリカ。
そして、紆余曲折ありながらも、なんとか防音室を運び込み、組み立てることができたわけです。
もう最高、最高だ。自分の家に音を出せるスタジオがあるのがこんなに素晴らしいことと思わなかった。人生で一番いい買い物だ。マジで。めちゃくちゃいろいろあったけど、あきらめなくて本当によかった。いや、私はあきらめてたんだけど、他の人が背中を押してくれた。
この物語に登場する人々は「もう無理だ」とか「あきらめろ」とか「お前バカか?」とか「ザマァwww」とか、誰一人言わない。
みんなが「きっとできる」「キミならやれる」と、応援してくれる。
なんだこれ。
なんなんだ。
アメリカ、すばらしいじゃないか。
日本とアメリカの最大級の違い。
今回の一連の事件で最も衝撃だったことは、こんなタフなことを起こっても、Facebookの上の人を含めて誰一人「おまえアホやなー」「無理やろ」「諦めさない」とか言わなかった。全員が「絶対にできるよ」とか、「これ、めっちゃいいやつだよね!」「つよしが、ヴォーカルブースでエンジョイできることを楽しみにしてるよ」とか、どんな立場の人でも言ってきた。こんな環境で生きているからかもしれないけど、相当困難なチャレンジもきっと彼らにとっては普通で、それより、その先にまっている楽しいことを考えているし、失敗したらどうしようとか誰も考えていない。自分は日本人の中では相当チャレンジな人やと思ってたけど、やっぱ日本人なんだなとおもった。やっぱ失敗が怖いんだ。失敗を避けたいんだなぁと。
う~~む……。
そうかぁ~~……。
ここだよなぁ。
根本的に違うのは。
日本の教育って「いかに失敗しない人間を量産するか」みたいなところあるじゃないですか。
失敗した人を徹底的に咎める。
そうすると、チャレンジしない人間が完成する。
何もしなければ、失敗もしないからね。
以前、サッカー日本代表の試合で、浅野選手がゴール前、自分でシュートが打てる絶好のチャンスの場面で、失敗することを恐れて、パスを選択したことがありました。しかも何度も。
浅野は、試合後に号泣しながら「次こそ絶対にシュートを打ちます!」と決意を語り、しかし、次の試合で同じような場面になると、またシュートを打たなかった。
ある種のイップス(精神的な原因による運動障害)?みたいな感じだったのかな…。
最近のサッカーの指導法は変わってきてると思うけど、昔は、シュートを外したら、監督やコーチや先輩からメチャクチャ怒られたんでしょうね。
だから、誰もシュートを打たなくなる。
世界と戦える日本人フォワードがなかなか育たないのは、そういう日本の風土や空気が原因だ、って話は、昔はよく言われてました。
例えば、今回の防音室の話を読んでいる時、私自身、「なんで!?」とか、「アホなのか!?」とか「絶対、無理だろ!」って思いながら読んでましたからね。
ようするに、私もゴリゴリの日本人だ、ってことなんでしょう。
悪しき日本の伝統に毒されております。
ひとりひとりが、少しずつでも変わっていかなくちゃイカンね。
ちなみに以前、人生相談の中で「人は失敗から学ぶことがたくさんあります。誰かの失敗する権利を奪わないで」という話を書きました。
芸術家のフリーダ・カーロは、世界で初めてジーンズをはいた女性といわれています。
女性がジーンズをはくと大バッシングされた時代に、フリーダは挑戦し道を切り拓きました。そんなエピソードにも言及している過去記事。