先日、地上波で「トイ・ストーリー3」を放送してましたが…
悪党のクマが去った後、保育園は本当にオモチャたちの「楽園」になったんでしょうか?
やはり諸悪の根源は「イチゴの臭いのするクマのぬいぐるみ」だったんでしょうか?
あえて変な方向から斜めに斬る!
徹底して悪党として描かれていたクマのぬいぐるみ「ロッツォ」。ヤツさえいなくなればすべて解決なのだろうか?
悪い奴でしたねぇ~、ロッツォ。
Thinkway Toys トイストーリー ロッツォ ぬいぐるみ Toy Story "Lotso Hugging" Bear
焼却炉でのくだり、ゾッとしました。
あんなの「子供に見せて大丈夫なのか?」っていうレベルで人間の醜さを表現してましたね。
ある意味、ショッキング映像。
日本の子供向け作品なら、助けてもらった悪党が改心して、土壇場で主人公たちを助ける、っていう描き方をしそうな流れでした。
でも、さすがアメリカン、そんなヌルい展開じゃなかった。
キレイゴトじゃ済まされない。
悪党は、最後まで悪党だった。
逆に言うと、「世の中には、ああいう根っからの悪党もいるんだよ。気を付けなさいよ」って、子どものうちから現実を見せておいた方が、教育としては正しいのかもしれません。
日本に住んでると、キレイゴトで済ましたくなっちゃいますけどね。
さて、本題に入りますか。
ロッツォが仕切るサニーサイド保育園は、新入りオモチャにとっては「地獄」として描かれていたが…
まずね、そこんところでちょっとモヤるんですよね。
クマのロッツォが他のオモチャたちを支配するサニーサイド保育園は、新入りのオモチャたちにとっては地獄のような場所、みたいに描かれてましたけどね、な~んかね~、ちょっと違うと思うんよね~。
そもそもだ、なんで地獄なのか?っていうと、
「イモムシ組の子どもたちが、おもちゃを乱暴に扱うから」
って話じゃないですか。
イモムシ組は、年少さんですからね、まだ若い。メチャクチャ若い。
だから、おもちゃの扱い方も荒っぽい。
チョウチョ組の年長さんたちとは、遊び方も違う。
はるかにアグレッシブ。
イモムシ組に配属された新入りオモチャたちは、壁に叩きつけられたり、絵の具?でベチャベチャにされたり、ヨダレだらけにされたり。
おもちゃもすぐに壊れがちです。
それがつらくてしんどいワケですよね、おもちゃにとっては。
でもこれ、ロッツォが手を下してどうのこうのって話じゃないんよね。
ロッツォは所詮、ただのぬいぐるみ。
オモチャ仲間を支配はできても、人間の子どもたちに対して、何か働きかけるだけのチカラなど無い。
乱暴におもちゃを扱うように仕向けるとか、誘導するとか、そんな能力なんて無い。
率直に言って
ロッツォが居ようが居まいが、イモムシ組の子どもたちはオモチャにとって脅威なんですよ。
これがまずひとつめ。
バズたちは、この地獄的な局面を打開するべく、イモムシ組からチョウチョ組への配置転換を申し出るが…
これってさ、「イモムシ組はしんどいからチョウチョ組に移らせてくれや」っていう嘆願ですよね?
しかしバズたちの申し出に対して、ロッツォは「それはできない」という。
うろ覚えだけど確か、
「イモムシ組の子どもたちは新しいおもちゃを必要としている」
みたいなことを言ったよね?(うろおぼえ)
これさぁ、この時点では、ロッツォの言ってること、特に間違えてはいないと思うんですよ。
「イモムシ組で子どもの相手をするのがしんどい、だから、チョウチョ組に移動したい」っていう要望をいちいち聞いていたら、イモムシ組に留まるオモチャ、無くなりますよ?
全てのオモチャが、楽な部署(チョウチョ組)に異動を申し出ちゃうよ?
誰かが「損な役回り」を引き受けなければならないワケじゃん?
誰かが、イモムシ組に留まって、年少の子たちの相手をしなければならないわけじゃん?
これに関しては、ロッツォのせいでもなんでもない。
(では、ロッツォの何がいけなかったのか?それはのちほど)
確かに、バズ・ライトイヤーのようなタイプのおもちゃは、年少さんにはちょっと高度過ぎてその機能を使いこなせない可能性が高い。
だから、チョウチョ組に配置換えになる、っていうのはアリだろう。
バズは細かいパーツをたくさん使用しているから壊れやすいだろうし。
しかし。
しかしだ、レックスのようなオモチャはどうだ?
トイ・ストーリー4 英語と日本語! おしゃべりフレンズ レックス
あるいは…エイリアンたちは?
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これ…むしろ、チョウチョ組よりもイモムシ組で重宝がられるタイプだと思うんだよねぇ…。
そういった個々のオモチャの特性とかスペックとか強度なんかを考慮に入れた場合、ロッツォが言うように、
「お前ら、みんな揃ってチョウチョ組に移動とか、ダメに決まってんだろ」
っていう言い分にも、多少は説得力があるような気がすんのよね。
バズたちが言う「我々をチョウチョ組に異動させろ」っていうのは、自分(とその仲間)を救うための改善案であって、仮にその要望が認められたとしても、サニーサイド保育園では、相変わらず、誰かが「損な役回り」を引き受けなければならないことには変わりないんですよ。
相変わらず、誰かが、イモムシ組でこき使われ続けるんですよ。
配置換えが叶った場合、バズたちは助かるけど、他のオモチャは相変わらずイモムシ組の地獄なんですよ。
そう考えると、バズたちでさえも、「自分(たち)だけが助かればいい」というスタンスで物事を考えていることになるし、そう言った意味では、ロッツォやその手下たちと、何ら変わりないのではないか?という気もするんですけどどうでしょうか。
バズたちの嘆願は、サニーサイド保育園のシステムを改善したいという話ではなく「俺たちをチョウチョ組に移せ」という内容だったんですよね?
イモムシ組で過酷な労働に従事し続けている他のオモチャたちは、いつまでたっても救われることはない。
っていうかさ、こういう話って、世界中、どこの会社でも、どこの部活でも、どこのコミュニティでもよくある話だよね?
サニーサイド保育園のイモムシ組みたいなケースって、よくある話じゃありませんか?
厄介な仕事を、立場の弱い新人や派遣社員や、中途採用者にやらせて、自分たちは楽な仕事ばかりしている、っていう上司や先輩なんて、どこの組織にも存在してると思うんだけどどうですか?
心当たりありませんか?
極論を言うと、ほぼ全ての人間が、誰かにしんどい思いをさせながら、自分だけはラクしようとして生きてませんか?
しんどい立場にいる人を見かけた時に、そのつらさの半分を率先して引き受けます、なんていう人、70億人中、何人いますか?
みんな、自分が助かればいいって思って生きてませんか?
だとすれば独裁者ロッツォと同じじゃありませんか?
少なくとも、我々もロッツォも、同じ何かを抱えていると思いませんか?
そう考えると、ロッツォが居た頃のサニーサイド保育園って「地獄」だったんだろうか…?ってちょっと疑問に思えるんです。
ロッツォが仕切るサニーサイドが地獄なんだとすれば、我々が生きている、この現実の世界も十分すぎるほど「地獄」なんじゃないか?って気がするんです。
どこの会社にも、どこの組織にも、ロッツォのような人物が入り込んでいるように思えるのですが…。
誰かにしんどい思いをさせて、その上に自分の幸せを築いている。
多かれ少なかれ、みんな、そういう部分を持っていると思うんです。
ユニク◯で買い物する人の多くは、その商品が何故安いのかなんて気にしないじゃないですか。
知らず知らずのうちに「搾取」の片棒を担いでいるってことなのでは?
途上国の「労働搾取」で成り立つ「ファストファッション」、消費者はどうすべきか議論 - 弁護士ドットコム
激安ファッションの犠牲者 バングラデシュの悲劇とユニクロ「年収100万円」(木村正人) - 個人 - Yahoo!ニュース
そう考えると、結局みんな、同じ穴の狢というか、多かれ少なかれ、心の中にリトル・ロッツォを飼っているってことなのかも知れませんね…自戒。
ロッツォの何がいけなかったのか?
たしか、誰か(おもちゃ)のセリフで「統治者は皆の合意と賛同を得て選ばれるべきだ」みたいな発言がありましたよね?
これ、遠回しに「独裁政権は悪だ」、って言ってるのかもしれませんけど。
「権力は脅しではなく、統治されるものの同意から生まれるべきよ!」ですか。
バービーのセリフ。
結局、ロッツォの至らない部分っていうか、非難を浴びるべき悪いところって、
「みんなの意見を聞かない」っていう独裁者的な部分ってことなんすかね?
そういうことになってるんですかね、トイストーリー3の中では。
クライマックスの焼却炉のくだり「平然と恩を仇で返す」っていうのは論外として。
ウッディたちがサニーサイドへやってくる前から、支配者ロッツォは悪名高き人物だったんですよね?
(「サニーサイドは地獄」っていう噂はあったようですし)
いろいろ総合して考えると、少なくともロッツォの手下どもにとっては、ロッツォの言いなりになっている間はイモムシ組で働かなくてもいいし、夜中には自販機の中で違法賭博を楽しんだり、かなりパラダイスではあったような気もするんですけどね。
ようするに、
サニーサイドを地獄だと感じているオモチャたちがいるとすれば、それはイモムシ組での重労働を課されているオモチャたちですよね。
それ以外の、チョウチョ組のおもちゃや、ロッツォの取り巻き連中は、それなりに人生、楽しんでたんじゃないかなぁ…って気がするんですけどね~。
そういう意味では、なんだろうなぁ、ロッツォのダメな部分って…う~~む…。
やはり、独裁者的な振る舞い?っていうことなのかなぁ。
「集団を統治するためには、どこかにしわ寄せが行く」っていうのは、現実にもよくありがちな話のような気がするけどねぇ~…。
そしてそれを「悪」って言ってしまうのは、間違ってはいないんだろうけど…。
そして最後に。ロッツォなきあとのサニーサイドは、パラダイスなのか?
クマのロッツォが去った後、バービー人形のケンが統治することになったサニーサイド。
「サニーサイドは最高にクールな天国になったよ!」的な終わり方だったんだけど、これもねぇ~、モヤるんですよ。
実際、どんな改善が行われたのかと言えば、
「イモムシ組の仕事はしんどいので、みんなでそのしんどさをシェアしよう」
みたいな話なんよね、ザックリ簡単に言えば。
交代交代でイモムシ組の子どもの相手をする、っていう。
しんどい仕事は、みんなで少しづつ分かち合いましょう、みたいな。
これ、素晴らしい考え方なんですけど…これこそがみんなが考える「楽園」なのだろうか。
皆が掲げる理想の世界なんだろうか。
例えばさ、
「世界中の苦しみをみんなでシェアしましょう」
ってなった時に、おそらくほぼ全ての日本人は、今以上に苦しみを背負わなくちゃダメになるんですよ。
地球全体で考えると「日本に生まれた」って言うだけで、相当ラッキーなポジションにいますからね。
経済的な事だけじゃなく、教育とか、医療とか、治安とか、いろんな部分で相当恵まれている。
ちょっと考えれば、我々よりも困難な日常を生きている人々は何億人も、何十億人もいる。
いつ、流れ弾に当たって死ぬか分からないような生活をしている人もいる。
経済的な理由で病院に行けずに、治療すれば簡単に治るケガや病気で、苦しんだり命を落としている人も大勢いるでしょう。
スラム街で育ち、学校にも行けず、読み書きも出来ず、犯罪に手を染める以外に生き方を知らない子どもたちもいるでしょう。
「はい、人類みんなで苦しみを分かち合いましょう」
ってなった時に、多くの日本人は、首を縦に振ることは無いと思うんですよね。
「なんでオレが、見ず知らずの人間を助けなきゃならねぇんだよ」
って言うでしょう。
いや、日本人だけじゃないよ。
ほぼすべての、今現在、恵まれている人々は、他人の苦しみを背負い込みたくなんかないってのが本音よ。
現実的には、そういうことだと思うんですよね。
金持ちは「なんでオレが貧乏人たちのために税金を多めに払わなきゃならねぇんだよ!?」と毒づくわけです。
それでタックスヘイブンとかね、すこしでも税金をちょろまかそうとするわけですよ。
苦しみを分かち合おうなんて、夢のまた夢。
そういう現実を把握しつつ、サニーサイド保育園の「パラダイスっぷり」に対して素直に納得できるか?っていうと、正直モヤるなぁ…と。
生まれ変わった新生サニーサイド保育園のように「苦しみを全員で分かち合う世界」を本当にみんなが望んでいるのかな?
我々はそれを本当に「楽園」とか「パラダイス」と呼べるのかな?
・・・・・・・・・
っていうかね、私はそんなこと考えながら生きてますから、そりゃ生きづらいわけですよ。
生きるのしんどい。
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