NHKスペシャル「終わらない人 宮崎駿」を観て『才能』や『人間性』について改めて思った。

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先日のNHKスペシャル「終わらない人 宮崎駿は非常に興味深い内容でした。

あのスタジオジブリ宮崎駿監督が、引退宣言のあと、どのように過ごしていたのか?

実は、隠居生活を送るハヤオじいさんのことを、番組は2年間も密着取材していたんですね…。

元同僚や友人知人の訃報やお葬式の話が、たびたび耳に届くようになり、ハヤオも「自分に残された時間は長くはない」と実感する日々。

一度はハヤオ自身「やり残したことは無い」と思っていたはずなのに、ひょんなことから長編映画作りへの情熱の炎が再びメラメラと燃え上がり……。

というような内容でした。

このエピソード自体が映画みたいですね。

 

【驚愕】スタジオジブリの制作部門は解散していた!アニメーターたちは皆、ジブリを去っていたという事実!!

ちょっとビックリしましたね。

だだっぴろ~いスタジオの中には、たくさんの制作スタッフ用の机が並んでいましたが、そこに人の気配はありません。

これって「解散」という言葉を使ってますけど、実質「抱えていた約200人のアニメーターは全員解雇」ってことですよね…。(違うのかな?)

 

制作部門を解散って…。

 

結局もう、トトロとかのグッズ販売とか、再放送の放映権とか、ジブリ美術館の入場料とか、いわば「過去の遺産」で食いつないでいるようなもんじゃないですか…?

 

まさかスタジオジブリがそんなことになっていたとは、全く知りませんでした。

 

 ハヤオは、後継者を育てることができなかったんです。

一応、ハヤオ自身

「いや、後継者を育てたよ?育てたけど…」

 みたいな言い訳めいた事を言ってましたけど、才能のある若手を片っ端から潰していったのは、他でもないハヤオ自身なんですよね。

そういう「ハヤオによる若手殺し」のエピソードは山ほど出てきます。

 

 

私が以前、何かで見た話では、

ハヤオは全部「ハヤオ色」に染めちゃおうとするんですね。

ジブリの後期の作品を観ると何となく分かると思いますけど、

どことなく「過去の作品の焼き直し感」がある。

キャラクターの絵柄にしろ、

構図にしろ、カット割りにしろ、

話の流れにしろ、

「ハヤオ・テイスト」じゃないと、お墨付きをもらえない。

ハヤオからダメ出しされて、OKをもらえない。

「ハヤオ風味」の作品じゃないと、ハヤオが許さないわけです。

・・・・・・

これじゃあ、やる気のある若手や、才能のある若手は、どんどんジブリから逃げ出しますよ。

「自分の中にあるものを表現したい」と思う若手はいなくなります。

残るのはハヤオの言うとおりに動くイエスマンだけ。

 

徹底的に自分の意思を貫く宮崎さんの作品づくりは、裏を返せば「スタッフの個性を殺しかねない」という側面があった。

鈴木敏夫プロデューサーも著書「風に吹かれて」で、宮崎さんについて「他人のいいところを生かして、あるところに導くっていうことには最もふさわしくない先生」としている。

絶対的服従と献身を求めてきたジブリのスタッフにいきなり自発性を求めても難しいのではないか。

宮崎駿は「スタッフの個性殺しかねない」? 〈週刊朝日〉|dot.ドット 朝日新聞出版

 

鈴木プロデューサーにも言われてますね…ハヤオ。

「他人のいいところを生かして、あるところに導くっていうことには最もふさわしくない先生」

 

 

例えば「ハウルの動く城」はもともと、外部から出向してきた細田守監督に任せることになっていましたが、なんだかんだ、もめ事があって、結局ご破算になってしまいました。 

「『ハウルの動く城』の監督から降りてもらう」

と言われた時、細田監督は

「オワタ。オレの人生オワタ」

と思ったらしいですが、その後

時をかける少女
サマーウォーズ
おおかみこどもの雨と雪
バケモノの子

などの作品を生み出し、自分の力を証明して見せました。

 

細田監督を降板させ、自らが後任を引き受けることになったハヤオの言い分。

心情を持って恋愛を描ける人間がやらなければいけないから、監督は若い人がいいと、僕は最初にそう思ったんです。

ところが、そうじゃない人がやったから話がややこしくなったんですね。

なんか、わけのわかんない映画になってしまうからこりゃいかんと。

宮崎駿インタビュー「Cut」2010年9月号より)

http://d.hatena.ne.jp/type-r/20130104

 

 

もし仮に当時、そのまま細田監督に任せていたら「ハヤオ版ハウル」以上の映画を創れたか?

と言えば、それは難しいとは思います。

しかし「若手を育てる」というのは本来、そういうことなんだと思うんですよ。

 

ハヤオ自らが出ていって、

「ほれ。オレにちょっと貸してみな。こういう風に描けばいいんだよ」

って自分で全部やっちゃう方が、結局は早いし、クオリティも維持できるかも知れない。

でも、それをやっちゃうと若手は育たないわけですよね。

 

結局、「宮崎駿」は天才アニメ監督ではあるけれど、

人材の発掘や育てることに関しては、全く向いていなかった、ということなんでしょうね。

これは別に、ハヤオをディスってるわけじゃありませんよ。

私は、本来、天才とはこういうものだと思っているんです。

 

 

何かの才能が突出している天才は、その分、他の部分が著しく欠落しているのが当たり前なのではないか?

私は、宮崎アニメ、大好きです。

3つだけ挙げるとするならば

ルパン三世 カリオストロの城

風の谷のナウシカ

天空の城ラピュタ

ですかね。

 

あ、でも『もののけ姫』もいいなぁ~。

キリがない。

 

とにかく、ハヤオは長編アニメ映画の天才ですよ。

すでに才能は枯渇してる感はあるけれど、初期の作品は本当に素晴らしい。

それはもう疑う余地はないと言っていいでしょう。

 

そして。

もうひとつ、ハッキリしている…と言ってもいいのかな、

分かっていることは、ハヤオがそうとう偏屈なじいさんだということですね。

きっと、めんどくさい人だと思うんですよ。

 

もしかすると、人間としてはクズかも知れない。

いや、分からないし、知りませんけど。

 

少なくとも「父親」としては、決して褒められたもんじゃなかったと思います。

確か、ハヤオの息子、宮崎吾朗氏が言ってました。

「子供の頃、父と接してる時間よりも父の作品と接してる時間の方が長かった」

的な。

 

ようするに、息子の吾朗さんは、幼少期にハヤオと関わったことがほとんどないんですね。

 

近所のおじさんよりも、接点がなかったかもしれない。

そういう風に考えると、ハヤオは、決して良い父親ではなかっただろうし、同時に良い夫でもなかったんじゃないかと推測できます。

 

この話とか、強烈ですよ。

引用の引用みたいになっちゃいますけど、岡田斗司夫さんの著書に書いてあるのかな。

宮崎駿宮崎吾朗の親子関係は並ではありません。

宮崎吾朗は母親、つまり宮崎駿監督の奥さんから、

「あなたはお父さんのようになってはいけない、あの人は何ひとつ人間らしいこと、父親らしいことをあなたにしてくれなかった。あなたはそんな人間、アニメ屋になってはいけない」

と言われ続けて育ちました。

だから、宮崎吾朗も、

「僕は子どもの頃から何ひとつ親らしいことを、宮崎駿さんにしてもらったことはないです」

とブログに書いています。

宮崎駿監督は、ずっと家に帰らずにアニメを作り続けていた人間です。だから、彼が家族から赦されることはないかもしれません。

http://fujipon.hatenadiary.com/entry/20131202/p1

 

 

宮崎吾朗少年は、母親(ハヤオの奥さん)から

「お父さんのような人間になってはいけない」

と言われ続けて育ったという事実。

 

分かります?このヤバさ。

考えられる限り、これ以上に人を貶める言葉なんて…無いでしょ。

 

ハヤオお父さんは、人間としては「悪いお手本」なんですよ。

宮崎家にとっては。

 

お母さんから

「お父さん(ハヤオ)のような人間になってはいけない」

と何度も何度も言い聞かされて育った少年の気持ちを想像すると…。

う~~ん……。

 

 

よく「ジブリ大好き~!」って言ってるピュアな子がいますけどねぇ…。

「知らぬが仏」とでも言いましょうか。

 

となりのトトロ」を作った宮崎駿監督が

実はプライベートでは、ろくでもない夫であり、ろくでもない父親なんだ、という事実を知って、どう思うかですよ。

 

現実って、こういうことなのよ。

 

一見、尊敬に値する人間も、別の角度から光を当てれば、どうしようもないクズだったりするわけ。

 

何かの才能が突出している人は、同時に、他の何かが欠落してるのが当たり前。

 

私は、最初からそういう目で人間を見ているので、特にショックもないし、本当の意味でリスペクトに値する「神的存在の人物」なんていないって思っています。

 

どんなに素敵に見える人間だって、裏を返せばドロドロだったりしてね。

 

本当に素敵なのではなく、ただ単純に、見せたくないところを隠すのが上手なだけ、という人間もうじゃうじゃいると思います。

素敵っぽく見えているだけ。

 

そう考えると、必要以上に誰かをリスペクトする必要はなくなりますね。

崇拝しすぎると自由を得られないしね。

gattolibero.hatenablog.com

 

 

誰にでも、良いところと悪いところがある。

良いところだけの人間なんていない。

 

そんなこんなで私は、

自分を実際よりも良く見せるために、取り繕うのは辞めよう

と思うようになりました。

完璧な人間を演じてもしょうがないんです。

たとえ周囲の人間をだませても、

自分で自分をだますことなんてできないんだから。

 

 

もう一度、言いますが、

私は宮崎駿監督をディスるつもりでこの記事を書いているわけではありません。

むしろ、好きですからね。

 

ただ、

天才的な「アニメ映画監督」の才能と、

人として立派であること、人徳があることとは、別の話なんですよね。

 

偉大な功績を残した人物なら、人間としても立派か?というと、全然そんなことは無くて。

むしろその逆であることの方が多いはずだと私は思っています。

 

何かを得るということは、何かを失うということ。

すなわち、

特殊な才能を持っている人物は、それと引き換えに何かを失っているはず。

 

 

たまたま今現在の世界の秩序や価値観にハマっている人間が、あたかも人生の勝利者のような顔をしているだけだよ。

最後に、カリスマ編集者の見城徹氏の話を。

見城徹氏が、情熱大陸か何かの番組に登場した時に語ってましたね。

うろ覚えです。

確かこんな感じ…。

 

「素晴らしい作品を創れる人間のクズ」

「クズみたいな作品しか創れない人格者」

なら、迷わず前者と仕事がしたい。

 

・・・・・・

 

ぶっちゃけた話、私は見城徹氏のこと、あんまり好きじゃないんですよ。

好きじゃないけど、言ってることは分かります。

見城氏が超絶やり手の敏腕カリスマ編集者だと言われるゆえんがここにある。

それは分かります。

 

そして、私ならきっと

「クズな仕事しかできない人格者」を選ぶでしょう。

私は、やり手にも、カリスマにもなれそうもない。

 

私はどうしても、

仕事が出来るか出来ないかで人を判断できない。

稼げるか稼げないかで人を評価できない。

どうしても「その人自身」を見てしまう。

ようするにバカなんだな。

 

ものすごくいいヤツなんだけど仕事は全然できない、という「個性」の持ち主の方に手を差し伸べてしまう。

 

過去に、そういう人もいっぱい見てきました。

そしてその逆も。

 

バカでのろまだけど、真面目で善良なヤツ。

反対に

仕事は出来るけど、性格が最悪なヤツ。

・・・・・・

そういう人々に出会った経験、みなさん、あるんじゃないかと思います。

もしかすると今、一緒に仕事をしている同僚や上司、部下がそうかもしれない。

そして、

そこが「仕事の場」である以上、

ほぼ間違いなく

「性格の良さよりも仕事が出来るかどうか?」

で、ひとりひとりの価値が決められているはずです。

人間性なんて2の次3の次。

言ってみれば、そういうルールの上で進行しているゲームですから。 

 

おカネがすべての世界では、人は「人格者」である必要が無い。

人間性が完全に腐っていようとも、より多く稼げた者の方が勝ち。

 

利益が出るのか出ないのか?

そっちの方がよほど重要。

 

今、世界はおカネ中心で回っている。

これが良いことなのか悪いことなのかは分からない。

 

ただ、ひとつ言えるのは、

私にとっては非常に難しいゲームだということ。

このルールだと、どうも今ひとつ、興味が持てない。

のめり込めない。

だから多分、こうしてブログを書いているんだろうなぁ。

 

 

いずれにせよ、実を言うと、

今のゲームのルールの中で、上手に立ち回れた者が「勝利者」の顔をしているにすぎない…。

実はただそれだけのことなんだけどね。

 

人間の価値が「野球の成績」で決まる世界なら野球選手が勝利者だろうし、

人間の価値が「サッカーの上手さ」で決まる世界ならサッカー選手が有利。

 

そういえばドラえもんの話でそんなのあったような。

「あやとりの上手さ」に価値がある世界では、のび太はスーパースターなんだよね。

 めっちゃ輝ける。

現世は残念ながら「のび太向き」ではないようだけれど。

 

 

私はもうちょっと、おカネ以外の価値の大切さが見直される世界が来てくれるといいなぁと思う。

例えば「人間性」。

 

「どうしようもなく仕事ができないヤツだけど、でもあいつはすごくいいヤツなんだよ。」

そんな風に言われる人が、もうちょっと生きやすい世界になればいいなぁと思う。

 

PS

冷静に考えてみたら「人間性」で評価される世界になっても、自分が輝ける可能性は全然なかったよ!!コノヤロー!!

どんな世界になれば自分が輝けるのか、もうちょっと考えてみようと思います。

では。

過去最高レベルに長くなりました。

最後まで読んでくれてありがとう。 

 

 


宮崎駿の雑想ノート

 

 


泥まみれの虎―宮崎駿の妄想ノート

 

 


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