鳴りやまないジジイのガラケー。

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先日、実家へ帰った時の事だ。

 

実家には、年老いた父と母が

ひっそりと、なおかつ大胆に暮らしている。

 

父=じいさんも

母=ばあさんも、

かなり体にガタが来ているし、

薬漬けみたいな状態だ。

 

じいさんは耳もかなり遠くなったし

ばあさんは、ボケが酷くなってる。

 

老いていく近親者を

目の当たりにするのは

想像以上にエグいものだが

目を背けるわけにはいかない。

 

現実を見ないといけない。

 

人は皆、老いるのだ。

 

オレも老いるし、

今ブログを読んでいるあなたもだ。

 

耳が遠くなり、

目が見えなくなり

理解力が無くなり

情緒不安定になったりする。

 

物忘れがどんどん激しくなり

ガスコンロの火を

つけっぱなしで寝てしまう事もある。

 

恐ろしい話だが、

誰もが通る道なんだ。

 

そして今まさに、

オレも老いている真っ最中だ。

物忘れの激しさが尋常じゃない。

 

物忘れが激しいと自動的にドラマティックな毎日が向こうからやってくる

 

まさか自分もこんなことになるとは

若い頃は想像もしていなかった。

 

 

さて。

 

先日実家でこんなことがあった。

 

じいさんの部屋で、ケータイが鳴っている。

いつまでも、

いつまでも、鳴っている。

 

うるさいから、様子を見に行くと

じいさんはいない。

散歩に出かけたらしい。

雨が降ってるのに。

 

ジジイの布団の上には

ぽつんと放置された

ガラケーが鎮座していた。

 

 

とにかく、

これほどずっとケータイが

鳴りっぱなしだということは、

かなり重要な要件なのではないか。

 

オレは、ちょっと心配になった。

ばあさんも心配したのか、

台所から、こちらへやってきた。

 

オレは、ばあさんに言った。

「じいさんのケータイずっと鳴ってるんだよね」

 

「うん、鳴ってるねぇ。」

ばあさんも

(ずっと鳴っててチョーウザいんですけど~)

と、思っているようだった。

 

これ、どうしようか。

ケータイうるさいから、

勝手に電話に出ちゃおうか。

 

それにしても、

誰からの電話なんだろうな。

ばあさん、心当たりある?

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

あれ?

 

ばあさん、今、

パカッと開いたガラケー持ってるけど、

 

・・・・・・

 

え?何?

 

今、電話中?

 

 

 

覗いてみると、

「呼び出し中」

と表示されている。

 

嫌な予感しかしない。

 

 

ばあさん今、

誰かに電話かけてる?

 

ババア「え?かけてるかなぁ…?」

 

いや、呼び出し中ってなってるし。

 

 

ババア「・・・・・・」

 

 

ババア「・・・・・・」

 

 

ババア「・・・・・・」

 

 

ババア「ホンマや。」

 

 

ばあさん、試しにそれ、一回止めてみようか。

 

 

じいさんの布団の上に放置されていた

鳴りやまないガラケーは、まるで

そっと息を引き取るかのように

おとなしくなった。

 

 

老いると毎日、こんな事が起こる。 

 

地獄なのか天国なのかは

オレには分からない。