NHKプロフェッショナル仕事の流儀「義足の仙人」臼井二美男
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昨日の夜、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」を後半部分だけ観ることが出来ました。
登場したプロフェッショナルは臼井二美男(うすい ふみお)さん(61)。
パラリンピックのアスリートなどの義足を作る「義肢装具士」をしている方でした。
久々に観たけど、やっぱり面白いですね、この番組。
言葉にならない期待に、応える
数多くの義足アスリートをパラリンピックにおくりだし、競技用義足作りの第一人者として知られる臼井二美男(61)。しかし臼井が手がけるのはそうした特別な義足だけではない。日常的に使用する生活用義足作りこそ、臼井が最も大切だと考える仕事だ。
臼井が大事にするのは、はく人のことを一番に考えた義足作り。
「前を向いて歩く人の追い風1.8メートルのような存在でありたい」by 臼井二美男
パラリンピック出場を目指す、とある女子走り幅跳びの選手の義足を手掛けた「義足の仙人」臼井さん。
臼井さんは、パラリンピックの選考会が行われる競技場まで、わざわざ同伴していました。
おそらく本来であれば、そこまでする必要はないんですが、臼井さんのモットーは「とことん、つきあう」ということ。
まるで、コーチのように、ウォーミングアップ中の選手のかたわらには臼井さんの姿が。
とはいえ、競技については門外漢ですから、何かアドバイスをするわけではありません。
ただなんとなく、そこにいるのです。
近づきすぎないよう、少しだけ距離をとりながら、でも、選手のそばで見守っている臼井さん。
このときの臼井さんの言葉がかっこよかった…。
一言一句、正確には覚えていませんが、こんなようなことを言っていました。
「前を向いて歩く人の追い風1.8メートルのような存在でありたい」
これ、陸上競技になぞらえて語っているんですけどね。
陸上の100メートル走なんかだと、追い風か、向かい風かで、タイムに若干影響があるわけです。
室内競技の場合はあまり考えなくてもいいんですが、屋外の競技では風の影響を無視することは出来ないんですよね。
追い風だと当然、選手は少しだけ速く走れます。
逆に、向かい風だとタイムが伸びません。
そして、追い風が2.0メートル以上だと、風の影響が大きすぎるということで、今度は記録(タイム)が、公認記録扱いでは無くなってしまうんですよね。
ようするに、
ただ後ろからビュンビュン風が吹いていればイイってもんでもないんですね。
例えば、桐生祥秀選手は2015年にアメリカの大会で、100メートル走で9秒87という記録を出したことがあるらしいんです。
これって、スゴイことなんです。
日本人が、100メートル走で9秒台を記録したことは過去に無いワケです。
超~快挙!
しかしこの時、追い風は「3.3m/s」でしたので、公認記録とはなりませんでした。
風の影響で速く走れただけなのでノーカウント、という扱いです。
残念…(+_+)
もう一度整理しますと、
追い風2.0メートルなら、間違いなく走りに影響が出る。
逆に
追い風2.0メートル未満なら、影響あるっちゃあるけど無いっちゃない。
すなわち、
追い風1.8メートルは、目に見えて明らかな後押しとは言えないけれど、限りなくそれに近い風
ってことなんですよね。
臼井さんが言う
「前を向いて歩く人の追い風1.8メートルのような存在でありたい」
という言葉のニュアンスが、何となく伝わったかな…?
明確に、あからさまに、誰かを助ける存在じゃなくてもいい。
なんとなく、ちょっとだけ、
前向きに生きようとしている人の背中を、そっとかすかに押してあげるような、そんな風みたいな存在でいいんじゃないか。
って。
素敵やん…(´;ω;`)ウッ…
今、就活がうまくいかず苦しんでいる人は、知っておくといいかも。臼井さんが義足をつくるようになったきっかけ。
(私は記憶力があまりよくないので、細かい部分が正確じゃないかも知れませんが、大体こんな感じでした。)
若かりし頃の臼井さんは、大学を中退してしまいます。
確か、めんどくさいとか、やる気が出ないとか、本当にささいな理由だったはず。
なんかもう、今だったら
「これだからゆとり世代はダメなんだ」
とか言われちゃいそうです。
それで、今で言う「フリーター」みたいな生活をすることになります。
トラックの運転手、バーテンダー、ガードマン……。
職を転々とする人の、典型的な業種ですね…。
実は私も通算で30回くらい職を転々としていますので、臼井さんの気持ちは何となく分かります。
自分の中には、とんでもないエネルギーがマグマのように煮えたぎっているのに、その情熱を何に傾けていいのか分からない。
職を変えるごとに思うのは
「違う。こんな事をするために生まれてきたわけじゃない」
妥協して
「まぁ生活のためだし、この職業でいいや」
とは、どうしても思えない。
「たった一度の人生、納得して生きて、納得して死にたい」
・・・・・・たぶん、臼井さんもそんな感じだったと思います。
(私の勝手な憶測ですが)
臼井さんは、人生を、己の魂を燃やせる何かを、ずっと探し続けました。
そして!
職安(公共職業安定所)、通称・ハローワークで、
「義足をつくる」という仕事の存在を知るのです。
きっかけはハロワ。
今では、その業界のレジェンドとも言えるような存在の臼井さんですが、こんな紆余曲折があって、義足をつくるようになったんですね。
こういう人生もあるんです。
「就活失敗したら死ぬしかない」とか平気で言っちゃう人とかいますけど、いくらなんでも、視野が狭すぎです。
「バカなの?死ぬの?」
ってやつです。
どうしても生きがいが見つからない人は、臼井さんの作業場へ出向いて、
「生きがいが見つかりません!とりあえず弟子にして下さい!」
って言って、ぶん殴られてくるといいです。
「人生、舐めんなよ!こっちは忙しいんだよ!」
って説教くらって来てください。
【インフォメーション】
ウソです。
臼井さんに迷惑をかけるのはやめましょう。
臼井さんだって、ずいぶん長い間、迷いの森の中にいたんですよ。
大学中退、フリーターの道へ
大学在学中から中退後もアルバイトはいろいろやりましたよ。例えばガードマン、バーテン、ワゴンでTシャツとかを売る露天商、音楽事務所でのコンサートの企画、それからトラックの運転手もずいぶん長くやりました。
21歳から28歳ころまでアルバイト生活でしたが、その間、不安は常に感じてました。俺の本当にやりたいことってなんだろう、この先、自分はどうなっていくんだろうって、常に模索して、悶々としてて、ほんとにさまよってるって感じでしたね。自分が何に向いているのかとか、きっかけとか入り口みたいなのが、なかなか分からなかったですからね。
臼井さんが、義足づくりの修行を積み、初めて全工程を任されてひとりで作り上げた義足。
臼井さんが義足づくりの職人として一本立ちをし、最初に作り上げた義足にまつわる悲しい話があります。
その義足は、結局、依頼主の高校生に使用されることはありませんでした。
高校生は悪性の何かが転移して、命を落としてしまったのです。
臼井さんは、その時の義足を今でも大事に持っています。
生きたくても生きることが出来なかった人がいる。
走ることも歩くことも叶わなかった人がいる。
臼井さんは、そういう現実と常に向き合って仕事に打ち込んでいるのです。
物づくりが好きだ、という方、
誰かが前へ進むための後押しになれるような、そんな「追い風1.8メートル」的な仕事がしたいという方、
義肢装具士(ぎしそうぐし)への道を検討してみるもの良いのではないでしょうか。
以上、
NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
「義足の仙人」の異名をとる義肢装具士、臼井二美男(うすい ふみお)さんの話でした。