布袋寅泰(ほてい ともやす)は、今日も新曲作りに励んでいた。
「う~~ん…。曲はできたんだけどなぁ…。詩が…全然降りてこないよ…」
布袋は、伝説のロックバンド「BOØWY」を卒業後、ソロ活動を開始。
「日本人アーティストとしては背が高すぎる(187㎝)」というコンプレックスをバネに、今日まで頑張ってきた。
自身の楽曲を自ら手掛ける布袋。作詞も作曲も、自家製だ。
水球仲間の吉川晃司とジムで軽く汗を流した後、レコーディング・スタジオへと向かう布袋。
脳天およびツンツンと立ち上げた頭髪の維持と保護のため、愛車はオープンカーだ。
カー・レディオから流れる山下久美子の名曲「赤道小町ドキッ」が、風に乗り、布袋のほほをやさしく撫でていく。(ただし、アツアツ亜熱帯)
「チッ…汗ばむわぁ…。」
実は、布袋は悩んでいた。
「それにしても…歌詞が…良い歌詞が浮かばないなぁ…。」
・・・・・・・・・
レコーディング・スタジオでは、先日知り合ったばかりの今井美樹が待ち受けていた。
「どうも、ほていさん(ニッコリ)」
今井と布袋は音楽仲間でありながら、同時に、MAN + WOMANとしても惹かれあっていた。
人は、相手に対して、自分には無いものを求める生き物だ。
布袋寅泰のジェルとスプレーでガッチガチに固めたヘアースタイルと、今井美樹のナチュラル寝癖ヘアは対極に位置するものであり、お互いがお互いを意識するようになるのは、必然だったと言えるだろう。
妻の山下久美子に隠れての密会は、このうえなくスリルがあった。
常にインスピレーションを大切にする布袋は思った。
新曲のタイトルは決まった…「スリル」でいこう。
スタジオ内でも布袋の葛藤は続いていた。曲ならいくらでも生み出せる。しかし、歌詞が思いつかない…。
今井美樹(以下、今井)「ホテイさん、アルバムづくりは順調?」
布袋寅泰(布袋)「いや~それがさぁ、作詞のところでつまづいちゃってさぁ…」
今井「そっかぁ~。なんか意外~~」
布袋「えっ?そうかな?」
今井「なんかホテイさんって、もっとノリと勢いだけで曲作ってると思ってた。」
布袋「いやいや、こう見えて、僕も結構、繊細なんだよね」
今井「へ~~そうなんだ」
布袋「そうなんだよ」
今井「全然、そんなふうには見えないけどね~!」
布袋はカチンと来た。
まさか今井が、こんなにポイズンを吐くような女だったとは。
正直、アタマに来た。
しかし布袋は同時に理解していた。
ここで声を荒げるようでは歌手失格だ。
のどは大事な商売道具。
こらえるのだ。じっとこらえるのだ…。
説明しよう。
布袋は常々、「三つの袋」を大事にしていた。
1つ目は、金玉袋。
睾丸を包むコブ状の突出部である。
2つ目は、かんにん袋。
ささいなことで怒ってはいけない。
3つ目は、きんちゃく袋。
免許や保険証などをひとまとめにしていた。
今井美樹にうながされるようにして、なかば投げやりに、自暴自棄気味に、作詞を始めた布袋寅泰。
今井「ホテイさん、あんた、ロックンローラーなんでしょ?難しく考え過ぎよ。」
布袋「そうかなぁ…?」
今井「作詞なんて、適当でいいのよ。ノリよ、ノリ。誰も歌詞なんて気にしてないわ。」
布袋「マジかよ…」
今井「そうよ。歌詞なんて、ザックリと、ベ―――っ!と勢いで書きゃいいのよ。」
布袋「ベー……っとねぇ……。」
布袋は新曲の楽譜をとり出した。
そしておもむろに、並んでいる音符の上に、鉛筆で書き込んでいく。
「ベ……。ベ……。ベ……。ベ……。」
今井「そうよ、そうそう、その調子!そのくらいの勢いでいいのよ!」
布袋「歌い出しが、ベ・ベ・ベ・ベ……『ベ』が4つか…。斬新だけど、こんなんでいいのかな?」
今井「何言ってんの!?あんた、ロックやってんでしょ?何かあったら『ロックに免じて許してくれ』って言っときゃいいのよ!」
スタジオはシェケナベイベーな空気に包まれ、そして夜はふけていった。
翌朝、レコーディング・スタジオに集まったスタッフたちは、完成した新曲の楽譜を布袋から手渡され、度肝を抜かれた。
スタッフA「えっ、ちょっと待ってくださいよ、布袋さん。曲の出だし、いきなり『ベべべべ』なんすか?」
スタッフB「『べべべべ』って。『ベ』が4つっておかしくないすか?」
スタッフC「歌詞を印刷する業者とかにも『べべべべ』って何だよw!って笑われませんかね?心配だなぁ…。」
スタッフD「いや、お前らちゃんとよく見ろ!そのあとが『ベイべベイべベイべベイべベイべー』だぞ!?問題はそっちの方だろ!?」
スタッフ一同
「『ベイべベイべベイべベイべベイべー』!?」
布袋寅泰「ロックに免じて許してくれ」
そういった経緯で完成した曲が、この「スリル」である。
お詫び。申し訳ありません。妄想が止まりませんでした。
この物語は、あくまでも、不謹慎極まりない私の妄想です。
実在の布袋、今井、ならびにレコーディングスタッフとは一切関係がありません。
しかも、いま確認したら、この曲の作詞は、作詞家の森雪之丞さんでしたwww(笑)
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